魔道ねこの目線

ただいまニャ(*ΦωΦ)ノなぞなぞ認証解除したニャ♪

超能力があるかもしれない猫のはなし

今週のお題「ねこ」


ねこと聞いて最初に頭をよぎるのは、私が子供の頃におばあちゃん家で飼われていた黒猫のことです。

祖母によって「クロ」と名付けられていた彼の当時の年齢は8歳。
人間なら中高年期の立派な成猫でした。

オス猫だからか、クロは女性にはおとなしく撫でられたり、カラダを擦りつけてきたりするのに、相手が男だと「フン」という顔で去ってゆくような人間くさいところのある猫でした。

彼は大きな猫で、猫のくせにやたらと筋肉質だし、触っても硬いし、勝手気ままに外を出歩くせいか、毛並みもフワフワでもなめらかでもなく、ちょっと小型の肉食獣を思わせる精悍な雰囲気の猫でした。

鋼の錬金術師エドワード・エルリックみたいな金色の目は、エドと同じくらいかなり目つき悪かったです。

家ネコなのに家ネコらしからぬ雰囲気のクロからは、彼を見て触ろうと近づく子供を途中で怯ませるような、ある種の強い意志みたいなものが感じられました。

私はクロを好きでも嫌いでもなかったのですが、クールな彼のベタベタ懐かない、適度な距離を取ってくれる感じは嫌いではありませんでした。



夏休みで祖母宅にお泊まりしていたある日の夜のことでした。

新しく近所にできたコンビニでアイスを買って戻る途中で、私はクロを見かけました。

クロのやつめ、しばらく姿が見えないと思ったら、街灯に照らされた道端で、知らないお姉さんになついていました。

私を見ても知らん顔で、腹が立つほどおとなしくお姉さんに撫でられています。

じゃあまたね、と行こうとするお姉さんに、クロがなおもカラダを擦りつけて、お姉さんは足下にまとわりつくクロのせいでその場を離れられない様子です。

(何やってんのよ、クロのやつ)

祖母に代わって飼い主代理として、ちょっとクロに意見してやろうとそちらに近づいた時でした。

「…もう大丈夫。ありがとうね」
しゃがみこんだお姉さんが言うのが聞こえました。涙声でした。

そちらへ近づきかけたまま、動揺して途中で立ちつくした私に、お姉さんが「あなたの猫?」と聞きました。

「おばあちゃん家のクロです」
私は正確に答えました。



じつは、その後どうなったのか、何故だかほとんど覚えていないのです。

オトナの女性が道端で泣いていたという想定外の事態に、ショックを受けたか混乱して、記憶が飛んでしまったようでした。

どうやって祖母宅に戻ったのか、クロを連れ帰ったのかどうかも覚えていません。
その体験を私は誰にも言いませんでした。

ずっと後になって、その日のことを鮮明に思いだす出来事に直面するまで、思い出すこともありませんでした。




その猫との邂逅は、私がいちばんしんどかった時期に待っていました。

その日は最強最悪な1日だった上に塾まであって、私は疲れ果ててひとり夜道を歩いていました。

自宅近くの路地で、暗がりからのそりと出てきた猫に反射的にビビって、私はその場に立ちすくみました。

猫も私と一定距離をとった位置で動きを止め、私たちは見つめ合いました。

猫は、おばあちゃん家のクロによく似た大きな黒猫でした。

でもクロではありません。おばあちゃん家のクロは、いつのまにか居なくなっていて、大人たちはクロが死期を悟って姿を消したのだと言っていました。

その猫は左右の目の色が違うオッドアイで、そこもクロとは違いました。

でも、クロとそっくりの小型の肉食獣を思わせる身のこなしで、猫は道端で立ちすくんだままの私に近づいてきました。

近づいてくるのが本物の肉食獣なら走って逃げる場面でしたが、私は猫が何をするのか見ていようと、じっと待っていました。


そして…ふと気がついた時、私は足下にまとわりつく猫の存在を感じながら、理由もわからず泣いていました。

堰を切ったように、後から後から涙があふれてきて、私は誰にも気づかれないように、しゃがみこんで猫を撫でつづけました。
猫はおとなしく私に撫でられてくれました。

数分後、我に返って立ち上がり、じゃあねと行こうとする私を引き止めるかのように、猫はまた足下に身を擦り寄せてきました。

もう大丈夫だよ、そう言おうと思った瞬間、私はあの夜目撃したお姉さんとクロの邂逅を鮮明に思い出していました。

(そうだったんだ…)

何がどうと上手く説明することはできないけれど、これが猫の力なのだと、謎が解けたような、すべてが腑に落ちた気がしました。

そんな経験は後にも先にもこれきりで、クロに似た猫とは二度と会うことがありませんでした。

自宅近くのその路地付近を通るとき、しばらくはあのオッドアイの黒猫の姿を探さずにはいられませんでしたが、付近を歩いている姿さえ見かけませんでした。


あれから随分経った今では、私は無類の猫好きになりました。

ひょっとしたらそれも原因のひとつなのかもしれません。

事情あってまだ猫を飼ってはいませんが、一緒に暮らそうと思えばできるし、相棒の猫と一緒の生活を想像したりもします。

いま住んでいる地域には猫を飼っている家も多く、家の敷地の屋根や塀の上、駐車している車の下からこちらを眺めている猫をたまに見かけます。

猫好きになった今、触らせてくれるのなら撫でたいし、近づいて挨拶だってしたいのです。

でも、ご近所の猫さん達は、私が視線を向けても目をそらすし、こちらから近づくとサッと逃げて行ってしまいます。

「今のアンタに用はないよ」
まるで猫さん達にそう言われているみたいな気がしています。

実際のところはどうなんですかねぇ(ΦωΦ)